ふとした時に感じる「まぶたの重み」や「片目周辺のうっとうしさ」。
過密スケジュールによる眼精疲労や睡眠不足のせいだと片付けてはいませんか?
しかし、そのささやかな違和感が、実は脳から届いている「一刻を争う警告サイン」である可能性があります。
「脳梗塞が『いつの間にか』進行する背景には、無症候性脳梗塞という私たちが気づかない病変の存在があります。
つまり、明らかな発作がなくても、脳の深部の血管障害は経過とともに年々進行しているということです。
さらに、こうして起きた血管の異常が改善することは基本的にありません。 この自覚症状のない血管の異常の蓄積こそが、将来のいわゆる『脳梗塞』の発症につながっているのです。
つまり、『脳の奥深くで小さな血管障害が静かに積み重なって、あるとき症状を呈するほどの脳梗塞が発生する』これが、いつの間にか進行するメカニズムです。
また、まぶたや目元に症状が出やすい理由には大きく2つあります。1つ目は、脳梗塞の初期症状として起こる『顔面神経麻痺』です。
顔面神経麻痺では主に片側の口角(口元)がダラリと下がり、顔全体のバランスが崩れることで、結果として『まぶたの重みや違和感』として自覚されることがあります。
2つ目は、脳幹などの梗塞や動脈瘤の圧迫により、まぶたを開け閉めする『動眼神経』が麻痺してまぶたが持ち上がらなくなる状態(眼瞼下垂)です。
この場合、まぶたが下がるだけでなく『物が二重に見える(複視)』症状を伴うことも少なくありません。
※脳卒中とは脳梗塞(脳の血管が詰まる病気)と脳出血(脳の血管が破れて出血する病気)を総称した言葉です。」
まぶたの『開けにくさ(垂れ下がり)』や口元の歪みを『単なる疲れ』と自己判断して放置すると、数日以内に本物の脳卒中を発症し、一生残る後遺症を抱える危険があります。
※なお、日常的によくある『まぶたがピクピク波打つ現象(眼瞼ミオクローニアなど)』の多くは眼精疲労やストレス、カフェイン過剰による一時的なものです。
危険なのは『目や口に力が入らない』『まぶたが持ち上がらない・開かない』といった麻痺症状です。
こうした症状は数分から数十分で自然に消える可能性があります。これは、一時的な血流不足で起きる一過性脳虚血発作(TIA)によるものです。
疲労や寝不足で片付けられがちですが、TIAは脳梗塞のリスクが高いことを意味しているので、放置すると本物の脳梗塞を発症するおそれがあります。
さらに、まぶたの症状が脳出血や脳動脈瘤の拡大のサインのこともあります。脳出血は、血管が詰まるのではなく、血管が破れて出血する病気です。
少量の脳出血や血管の膨らみによって、動眼神経の麻痺が生じていることもあるのです。
特に『まぶたが下がって開きにくい』のに加えて『激しい頭痛』や『物が二重に見える』症状がある場合は、くも膜下出血として大きな出血に至る可能性がある極めて危険なサインです。
『脳の血管の病気になるような年ではない』『疲れているのかもしれない』『しばらく休めば治るだろう』という正常性バイアスによって、受診が遅れてしまうことがあるため、違和感を感じたら、ためらわずに神経内科や脳神経外科を受診してください。
明日から実践すべき具体的行動は、発症を防ぐための『家庭血圧の測定』と、手遅れを防ぐための『FAST(ファスト)チェック』です。
予防のルーティンとして、毎朝トイレを済ませて座った状態で家庭血圧を測ってください。上の血圧が135mmHg以上なら、医師に相談する明確な基準となります。
一方で、すでに起きてしまった脳卒中を早期発見するには、顔、腕、言葉を評価する『FAST』という世界的なチェック法が推奨されています。
まぶたの麻痺や一瞬の違和感を「年齢や疲れのせい」と決めつけて見過ごすと、数日以内に重大な脳卒中を引き起こし、深刻な後遺症を残してしまう危険があります。
脳梗塞は発症から4.5時間以内であれば、後遺症を大幅に軽減できる治療の選択肢が存在します。
「気のせい」という思い込みを捨て、初期シグナルに即座に反応することが、健やかな生活を維持するための防衛策となります。