中高年になると増える、皮膚のイボやホクロ。「ただの加齢かな?」と放置している方も多いのではないでしょうか。
実際、その多くは加齢や体質による良性のものですが、ごくまれに体の内側からの重要なメッセージである可能性も存在します。
短期間で急にイボが多発した」「以前より明らかに色や形が変わってきた」といった症状は、どのように見極めればよいのでしょうか。
「まず前提として、中高年以降に増える褐色〜黒褐色の盛り上がり(脂漏性角化症など)のほとんどは、加齢や紫外線の影響による良性の変化です。数年単位でゆっくり増えていくものであれば、過度に心配する必要はありません。
ただし、急に皮膚の『イボのようなもの』が多数増える場合、内臓悪性腫瘍に伴う皮膚症状として知られる『Leser-Trélat(レーザー・トレラ)徴候』を考えることがあります。
これは、脂漏性角化症と呼ばれる良性の皮膚腫瘍が、短期間に多発する現象です。脂漏性角化症自体は加齢に伴って非常によくみられる良性病変であり、多くは胃がんなどの悪性腫瘍とは関係ありません。
表面がザラザラした褐色〜黒褐色の盛り上がりとして見られ、中高年以降に非常に多いものです。
ただし、数週間から数か月の単位で急激に数が増える、強いかゆみを伴う、急に大きくなるといった場合には、腫瘍に伴う皮膚症状として注意が必要です。
Leser-Trélat徴候は胃がん、大腸がん、乳がんなどの腺がんとの関連が報告されていますが、頻度は高くありません。
メカニズムとしては、がん細胞が産生する成長因子やサイトカインなどが、皮膚の角化細胞や表皮の増殖を刺激することで、脂漏性角化症が急速に目立つようになる可能性が考えられています。ただし、詳細な機序は完全には解明されていません。」
「大切なのは、単にイボやホクロがあること自体を恐れるのではなく、『変化のスピード』や『全身症状の有無』を総合的に見ることです。
加齢に伴う脂漏性角化症は、顔、首、体幹などに少しずつ増えていくことが多く、数年単位でゆっくり増える場合は、通常は過度に心配する必要はありません。
一方で注意したいのは、『以前はほとんどなかったのに、数週間から数か月で急に多数出てきた』『短期間でサイズが明らかに大きくなった』『強いかゆみを伴う』『赤みや炎症を伴って目立つ』といった変化です。
さらに、同時期に体重減少、食欲低下、胃部不快感、黒色便、貧血症状などがある場合は、皮膚の変化だけで判断せず、内科的な評価も含めて検討する価値があります。
一方、『ホクロ』の場合は内臓がんというよりも、皮膚がん(悪性黒色腫=メラノーマなど)との鑑別が重要になります。
以下のような変化が見られる場合は、皮膚科での確認をおすすめします。具体的には、左右非対称、境界がギザギザしている、色むらがある、急に大きくなる、出血する、かさぶたを繰り返す、痛みやかゆみが続く、以前と比べて明らかに形や色が変わった、などの変化は皮膚科で確認した方がよい所見です。
つまり、胃がんの可能性を考える危険サインは『イボ様の脂漏性角化症が短期間に多発すること』が中心であり、ホクロについては『その病変自体が悪性かどうか』をまず確認する必要があります。」
「肌の異変に気づいた際の受診の目安としては、まず『変化のスピード』を重視するとよいでしょう。
数年かけて少しずつ増えてきた小さなイボやシミであれば、緊急性は高くないことが多いですが、数週間から数か月で急に多数増えた場合、急に大きくなった場合、強いかゆみや炎症を伴う場合、出血・びらん・痛みがある場合は、皮膚科で一度確認することをおすすめします。
皮膚症状に加えて、食欲低下、体重減少、胃もたれ、腹痛、黒色便、息切れ、動悸、原因不明の貧血などがある場合は、皮膚科だけでなく内科や消化器内科への相談も検討してください。
加齢に伴う皮膚の変化は誰にでも起こる自然なものですが、万が一のサインを見逃さないためには「変化のスピード」に注目することが大切です。